「中古戸建住宅の査定変更」と価格への影響
新築中心から、良質の中古住宅が流通する社会へ
日本は欧米に較べて、新築へのこだわりが強い国民と言えます。住宅を購入するなら、中古住宅よりも新築物件の中から選びたいと考えている人は少なくありません。
日本人の新築住宅志向が強くなっている背景としてあげられるのが、国のこれまでの政策です。新築住宅の建築・取得を優遇するような政策が重点的にとられてきました。このため、中古住宅流通量が増えず、住宅購入希望者にとって、中古住宅の中から自分のライフスタイルに合った物件を探しにくいという不動産市場が形成されてきました。
建物に対する不安が、中古住宅敬遠の理由だった
住宅を購入する際、中古住宅を敬遠する理由として、建物に対する不安や不信があります。「建物のどこかに欠陥が隠れているのでは?」という懸念を払拭してくれる客観的な裏付けが得にくいのが現実です。
国はこれまでの新築偏向の政策を改め、良質の中古住宅が豊富に流通する社会をめざして環境整備に取り組み始めています。良質の住宅を作り、きちんと手入れして、長く使う社会を後押しし始めたと言えます。
「価格査定マニュアル」改訂と、価格への影響
このような国の方針転換を反映して、「価格査定マニュアル」が改訂されました。
その代表的なものが、不動産流通推進センターの「既存住宅価格査定マニュアル」や日本不動産鑑定士協会連合会の「既存戸建住宅建物積算価格査定システム」です。
価格査定マニュアルは、中古住宅の売り出し価格を不動産会社が査定するときに参考にするものです。査定価格は不動産会社によって若干の差はありますが、マニュアルをもとに作成することによって、査定の根拠も客観的に示せるようになっています。
耐用年数やリフォーム部位などが改訂
不動産流通推進センターの「既存住宅価格査定マニュアル」は、「戸建住宅用」「マンション用」「住宅用地用」に分かれています。
2015年7月には、「戸建住宅用」のマニュアルが改訂され、国の「中古戸建住宅に係る建物評価の改善に向けた指針」に沿って、耐用年数、リフォーム部位の拡大など、いくつかの改訂が行われています。
具体的には、従来に比べてリフォームや設備交換が査定価格に影響する要素が大きくなっています。維持管理を適切に行ってきた戸建中古住宅は、これまでより高い査定価格がつくかもしれません。
マニュアルが改訂になったからといって、実際の成約価格がこれまでより高くなるとはかぎりませんが、中古住宅への信頼度が徐々に高まっていくことが期待されます。
売主としては、リフォームや修繕を行ったら記録をきちんと残し、住宅としての質を客観的に示せるようにしておくことが大切です。