「実家の扱い」と親とのコミュニケーション
親が亡くなったあと、実家をどうしますか?
親が住んでいる住宅は、親が亡くなったのちはどのようにするのか、あなたの方針は決まっていますか?
選択肢は人に貸す、売却する、空き家にしておくなどいくつかあリますが、親が元気なうちは、なかなか真剣には考えられないものです。しかし、親が亡くなってからでは遅いことが少なくありません。
相続が起きてからでは、悩みが深くなることも
ご存知のように、全国で空き家が増えています。国土交通省の「空き家実態調査」によると、空き家になったきっかけは、子が親の住宅を「相続した」ことが半数以上となっています。
親亡きあとの住宅をどうするかは、実際に相続する時が来てから考えようと先送りしがちです。しかし、親が亡くなってから対応するのでは、かえって悩みが深くなることもあります。
たとえば親の希望がわからないため方針が固まらず、何年も空き家状態が続いたり、相続人のあいだで考えや希望が食い違い、関係が悪化したりするケースも少なくありません。
親が元気なうちに、考えや希望を確認しておく
親亡きあとの住宅を円滑に相続して生かすには、親が元気なうちにその考えや希望を確認しておくことが大切です。親の考えや希望なら、多少の不満が残っても相続人どおしでもめることも少なくなります。親の希望を第一優先に検討しようとするので迷いが少なくなり、方針を早く出すことができるでしょう。
しかし、そうとわかっていても、親に亡くなったあとのことを話題にすることは、大変気が重いことです。
親から、「財産をねらっているのか」と思われたり、「早く死ねばいいと」と思われたり、へそを曲げて耳を傾けてくれなくなったという人もいます。
日頃からの「親とのコミュニケーション」が大切
親との関係を悪化させずに、住宅に対する親の希望を聞き出すには、日頃から小まめにコミュニケーションをとっておくことが大切です。
次の点に気をつけてみてください。案外うまく話ができるかもしれません。
1.二人きりで話す機会をつくる
帰省した時は親の話をきくチャンスです。子供を連れての帰省では、親はゆったりとした気持ちで話をするどころではありません。二人きりで話をする機会をみつけてはどうでしょう。
2.親の住宅への愛着を尊重する
いきなり、自分の死後に住宅をどうしたいかと切り出されても、親は戸惑うばかりです。親の気持ちがほぐれる話題から話し始めてはどうでしょう。たとえば住宅を購入した当時の苦労話や、建てたときのこだわりを聞くと、喜んで話をしてくれるのではないでしょうか。
「学費を貯めながら住宅ローンの返済していくのは大変だったでしょ?」と、親の苦労を想像し、感謝の気持ちを表わしていけば、親の気持ちもほぐれていくはずです。
3.家を大事にしたいという気持ちを表わす
親の本音としては子どもと同居したい、あるいは子どもに住宅を引き継いで住んでほしいと思っているケースもあります。
親から気持ちを伝えられたとき、「そんなことできるわけないでしょ」とか、「こんな田舎の家をもらっても維持管理にお金がかかるだけ」などとつい口にしがちです。親の気持ちを一旦は受け取るようにしてましょう。
本音を受け止めつつ、ときにはお茶を濁すことも大切
子供として親の本音を受けとめることが大切です。そのうえで、「おふくろが大事にしてきた家だから、そうしたいんだけどなあ、でも、なかなかなあ・・・」などと、お茶を濁す方便もときには必要です。
子が返答に困っている様子を見て、親は自分から「退職してから、ゆっくり考えればいいよ」とか、「住むのが難しければ処分してくれてもいいんだ」などと、現実に可能な道を示してくれることもあります。
親のこれまでの人生や今後の暮らし方を尊重する気持ちで接すれば、親も住宅の今後を一緒に考えてくれるでしょう。