不動産会社を介さず知人に売却してもよい?
回答:ファイナンシャル・プランナー 北見久美子
<質問内容>
Q:専任媒介でマンションの売却を依頼していますが、ママ友から「直接買いたい。そのほうが手数料かからないから」と言われました。不動産会社を介さずに売ることは可能でしょうか?(千葉県市川市 38歳 主婦 夫 47歳 会社員)
回答:住宅の売却には専門的な知識が必要です。不動産会社を介したほうが、トラブルを防ぐことができるので安心です。
「自己発見取引」は仲介手数料はかからないが・・・
売主が自分で知人や親戚などの買主を見つけて売却することを、「自己発見取引」と呼びます。
「自己発見取引」は、不動産会社との契約が「専任媒介契約」や「一般媒介契約」の場合は可能ですが、「専属専任媒介」ではできないことになっており、違反すれば違約金が発生することもあります。
「自己発見取引」では、仲介手数料が売主、買主ともに不要となる点が魅力です。
仲介手数料は、売買価格が400万円をこえる住宅では「物件価格の3%+6万円+消費税」です。3000万円の物件なら96万円(プラス消費税)が支払わなくてよいことになります。
不動産の売却には、専門的な知識が必要
自分で買手を見つけて売却する場合、不動産会社を介さない分、売却の条件交渉が買手と自由にできると思いがちです。
しかし、売主が「自己発見取引」を行うには、不動産売買の専門的な知識が必要です。知らないで行うとミスも起きやすくなります。
契約書の作成は、司法書士や弁護士などに依頼すればカバーでき、費用も数万円程度ですから大きな負担とはならないでしょう。
しかし、購入代金の決済は簡単でありません。買主が住宅ローンを組もうと考えている場合、「自己発見取引」では銀行が貸付けに難色を示すため、ローンを組むことは容易ではありません。
また、銀行は不動産業者など宅地建物取引士の資格保有者が作成した「重要事項説明書」の提出を求めてきます。
「重要事項説明書」は不動産業者など宅地建物取引士の資格保有者が作成するもので、売主個人が自分で作成することはできません。
個人対個人の売買は、現金取引でないと難しいと言えます。
瑕疵(かし)が見つかると、自分で対応しなくてはならない
住宅の売却では、とくに売却後に瑕疵担保責任を問われないようにすることが重要です。
瑕疵担保責任とは、買主が契約時に知ることができなかった住宅の重大な不具合(瑕疵)が、後でわかった場合、売主は責任を負わなければならないというものです。
具体的には、雨漏りや白蟻の被害、住宅の傾きなど、補修に大きな費用がかかるような住宅の不具合です。
売却の際、宅建業者が仲介する場合には、瑕疵担保責任は住宅の引き渡し後3カ月とするのが一般的です。築40年など古い住宅では「瑕疵担保責任免責」をつけて売却するケースが少なくありません。
免責をつけておけば、住宅に何か不具合が見つかった場合でも、責任を負わずにすみます。
不動産会社を介したほうが、トラブルを防止できる
不動産会社は住宅の売買取引を数多く扱ってきており、トラブルを避ける契約書の作成や、トラブルが起きた場合の対応法などを経験的に熟知しています。
仲介手数料はかかりますが、不動産会社を介したほうが、売主は安心して、また効率よく住宅を売却することができると言えます。
(プロフィール)北見久美子 きたみ・くみこ CFP(ファイナンシャル・プランナー)&消費生活アドバイザー。個人相談数千件の経験を生かし、「ライフプランに生かすお金の活用法」など、全国各地で住まいに関する講演を行っている。雑誌などでも連載多数。主な著書に『親のお金の守り方』『助成金がわかる本』『50歳からのお金のきほん』などがある。日本FP協会会員。