民法改正で気になる、売主の「契約不適合責任」って?
2020年4月1日から施行された改正民法。改正後は、従来売主に課せられていた「瑕疵担保責任」に変わって、「契約不適合責任」が新たに導入されました。
買主保護の意味合いが強まったと言われる今回の改正。いったいどのようなものなのでしょうか?「契約不適合責任」の内容と、売主が注意すべき点についてお話しします。
現行法の「瑕疵担保責任」の内容について
「契約不適合責任」に触れる前に、まず、現行民法の「瑕疵担保責任」について簡単におさらいしておきましょう。
●以前の「瑕疵担保責任」とは
売買契約をした時点で売主が気づかなかった不具合(隠れた瑕疵)が、引き渡し後、買主によって発見されることがあります。
改正前の民法は、買主が隠れた瑕疵を発見してから1年以内であれば、売主に対して損害賠償を請求できると定めていました(売主が個人の場合)。
売主は隠れた瑕疵が見つかってから1年の間、瑕疵担保責任を負うことになります。
ただし、売主・買主が合意すれば責任期間の変更も可能で、「引き渡し後3カ月」とする契約が多かったです。なかには瑕疵担保責任を「全部免責」としているケースも見られました。
「契約不適合」で何が変わったのか
それでは、新民法の「契約不適合責任」とはどういうものでしょうか?
改正前の民法にあった「瑕疵」という言葉は新民法では一切使われなくなり、替わって登場するのが「契約不適合」です。
改正後の条文を見てみましょう。
第562条
引き渡された目的物が種類、品質又は数量に関して契約の内容に適合しないものであるときは、買主は、売主に対し、目的物の修補、代替物の引渡し又は不足分の引渡しによる履行の追完を請求することができる。ただし、売主は、買主に不相当な負担を課するものでないときは、買主が請求した方法と異なる方法による履行の追完をすることができる。
「契約不適合責任」のポイントは、次のとおりです。
●契約内容と異なる住宅を売ると、責任が発生
民法改正後は、不具合に限らず「契約の内容に適合していない」と判断された場合、売主に責任が生じます。
どのようなケースが「契約不適合」に該当するかについては、今後の事例などを踏まえて徐々に明確になっていくと考えられます。
●買主の請求権が拡大
改正前の民法では、隠れた瑕疵が見つかった場合、買主が売主に請求できるのは「損害賠償」「契約解除」の2つでした。
改正後は次のようになっています。
「契約不適合」が見つかった場合、買主は上記2つに加えて「追完請求」と「代金減額請求」も可能になります。
・追完請求・・・契約どおりのものを請求できる(設備の交換、代替物の引き渡し、補修など)
・代金減額請求・・・売主が追完請求に応じない場合は、購入代金の減額を請求できる
買主は追完請求(または代金減額請求)と損害賠償請求を同時に行うことも可能です。
●買主の請求期間は同じ
改正民法では、買主が売主に請求できる期間について「買主が不適合を知った時から1年以内に売主に通知すること」と定めています。
ただし、売主が不適合を知りながら言わなかった場合はこの限りではありません。
●契約解除の対象が広がった
これまでは、買主が隠れた瑕疵を理由に契約解除できるのは、居住目的で住宅を購入したのに重大な欠陥が見つかり住めなくなるなど、「契約の目的を達成できない時」に限定されていました。
しかし改正後は、契約不適合の内容が軽微な場合を除き、契約解除を請求できるようになります。
民法改正後の注意点
民法改正によって、買主の権利が広がりました。売主はトラブルを防ぐためにも、次のような点を心がけておきましょう。
・物件に不具合などがある場合は、契約書に明記する。
・「付帯設備表」や「告知書」には現状を具体的に記載する
・売買契約書の内容を事前にしっかりチェックする
・追完請求に備えて、現在の「瑕疵担保保険」への加入を検討する
住宅を売却する際は、売買契約の内容をこれまで以上に慎重に確認することが大切です。