【新型コロナ】 住宅市場への影響と売却のタイミング
4月からの外出自粛要請で、住宅市場は突然景色が変わりました。
多くの住宅購入検討者が現地内覧に出かけなくなり、仲介する不動産業者も営業を縮小しました。
新型コロナ流行をきっかけとした世の中の変化は、今後の住宅市場や売却活動にどのような影響を及ぼすのでしょうか?
取引件数は約半数に
緊急事態宣言が発出された4月度において、取引実態はどうだったのでしょうか?
首都圏(1都3県)の中古マンションのデータを昨年4月度と比較してみましょう。
図1をご覧ください。
図1. 首都圏の中古マンションの動向(2020年4月度)
出典:公益財団法人 東日本不動産流通機構「月例マーケットウォッチ2020年4月度」
●取引件数と売り出し価格
取引件数は前年同期比で約半数(52.6%下落)と極端に少なくなりましたが、売り出し価格の下落率は5.8%と極端な変化はみられません。
●成約価格
成約価格の平均単価は前年度より4.5%下落しています。
これは全体的な下落というよりは、購入検討者が極端に少ないなか、価格を下げてでも現金化する必要に迫られた売主が増え、平均値を押し下げている可能性も考えられます。
実際の売買の現場では、コロナの影響で買い手側の資金調達や物件選びがシビアになり、その結果、人気物件の価格には大きな影響がない一方で、そうでない物件は苦戦する傾向があるようです。
しばらくは需要の減少が避けられない
先が見通せない不安定な時期はまだしばらく続きそうです。
ここから先の売却活動では「売買には相手方がいて、価格は需要と供給で決まる」という原則を頭の中に入れておくことが大切です。
需要(購入検討者の動き)が極端に減っている時期は、どんなに販売活動を行っても期待以上の成果をあげるのは至難の業です。
そのため、急いで売却する必要がないのであれば、ワクチンや効果的な治療薬のめどがつくなど、社会全体の不安感が和らいだ後に積極的な販売活動に打って出るのもよいと思います。
アフターコロナの売却を成功させるには?
では、住み替えに伴う自宅売却や遺産分割のための資金調達など、一定期間内にどうしても売りきらなければならない場合は、どうするのがよいのでしょうか?
●決済の確実性を重視しよう
今回のような不安定な状況下では、取引のリスクを極力減らすために、決済の確実性(代金支払いの確実性)を最優先に検討することが大切です。
たとえば、買い手の頭金が多いほど決済の安定性は上がります。
また、住宅ローンを利用する買い手に対しては、事前審査で確度の高い承認が取れているかどうかしっかりチェックする必要があります。
●粘り強く条件交渉を
アフターコロナの住宅市場は当面の間、需要が(昨年に比べて)少ないなかでのマッチングになりそうです。
売り出しても次々に購入打診の話が舞い込んでくるとは限りません。購入申し込みがあったら、できるだけ真摯に話を聞く姿勢を持ち続けることが大切です。
市場が縮小しているときに来る買い手は、売り手側からすればシビアと思える条件交渉をしてくることもありますが、半面、真剣な人が多いのも事実です。
たとえ買い手からの提示価格が不本意であっても、すぐに断るのは得策ではありません。不動産会社の担当者を味方につけながら、粘り強い交渉を心がけるとよい結果につながると思います。
(プロフィール)江藤厚明(えとうこうめい)
1963年、福岡県生まれ。早稲田大学社会科学部卒業。住宅総合研究所主催。不動産会社経営のかたわら、不動産専門学校カリキュラムやセミナー等で講師を務める。著書『マイホーム安心購入チェックリスト』(大栄出版)など。